『夏へのトンネル、さよならの出口』読後の感想
目次
【夏へのトンネル、さよならの出口】
7月18日に「第13回小学館ライトノベル大賞」
W受賞の一角、
【夏へのトンネル、さよならの出口】
が満を持して刊行されました。
私個人としても、「夏」には
弱いんですよね。
「夏待ち」「あの花」など
思い入れ深い作品が多いのです。
季節的によく舞台になる「夏」
私は、期待しながら読み進めていきました。
どうだったのか?
結論から言うと
めちゃくちゃよかったです。
この作品の特色というか、属性的に
面白かったという表現は、合わない気がします。
どこがおもしろかったかと聞かれると
「私、匂う?」
のところぐらいしか思い浮かびません。
小説としてのこの作品は、私の中では
非の打ちどころがなかったです。
言いたいことがたくさんあるので
分けてみます。
1.ページの構図がとてもよく読みやすい
小説は、知っての通り基本的に文字しかありません。
ラノベは挿絵が入るものですが
この作品は、章ごとの見出しにしか
イラストはありませんでした。
その点も絵に意識が引っ張られなくてよかったのと
1ページの文章量がとても読みやすかった。
読ませるところをしっかり読ませて
ページをめくらせる技術がすごかった。
気になって気になって
いつもなら急いで読んでしまって
内容も見落とすこともあるけど
ゆっくり読んでるつもりなのに
すいすいとページがめくられている。
なるほど、これがウラシマ効果
2.詩的な表現の数々
私の中でこの部分が一番きました。
小説といえばこうでなくっちゃという感じです。
たとえばですよ。
「ドンっと、心臓をノックするような轟音」
「靴のグリップを最大限生かし、ギュンとカーブを曲がる」
だとか、
情景の詩的表現がたくさんあって
そういうのが多いと
頭の中で勝手に動き出すんですよ
文字だけの物語が
命を吹き込まれたかのように
動き出すんです。
本当にここが一番私には刺さったし
見習うというかお手本がここにはありました。
3.登場人物のリアルな心情
この物語は、さほど登場人物が多くありません。
関わってくる登場人物が必要最低限のように感じました。
でも、そこに違和感はなく
むしろ必然のように感じます。
主人公があるときウラシマトンネルの
都市伝説を耳にするのですが
彼は叶うはずのない願いを妄信します。
でも、彼の過去や現状を鑑みても
仕方のないことなんです。
そこにヒロインが加わり
都市伝説を解明しようと動き出すのですが
彼女もまた、願いを持ちウラシマトンネルへと
足しげく通います。
少女の願いもまた人間味にあふれていて
読んでいてとても微笑ましかったです。
4.少年少女たちの成長
私が、一番感情移入してしまい
勝手に涙する重要なポイントです。
主人公の男の子は
無気力で気だるげで
何に対しても傍観します。
それは、彼の過去を知れば理解できます。
ヒロインの女の子は
確固たる信念と芯を持っていて
他を寄せ付けないオーラを放ち
自分の信じた道をとことん突き進む少女です。
そんな二人が主人公のある一言をきっかけに
関わり始めるのですが
序盤と終盤では、まるで
別人かのような変化が起きます。
それが、また微笑ましくて、愛おしくて・・・
読者ならではの視点なのですが
2人の気持ちはわかりますが
2人は、お互いの気持ちを知りえないですから
そこがまたもどかしくて、むず痒くて
2人の距離感の変化も見ていて引き込まれるポイントです。
5.疾走感あふれるシーンが盛りだくさん
あくまでこれは小説です。
みなさんが目にするのは文字です。
それなのに、やたらと走らされます。
実際に走るわけではないのですが
文章が疾走感にあふれているので
手に汗握るシーンがたくさんあります。
逃げるシーン
急ぐシーン
追いかけるシーン
会いに行くシーン
どれも手に汗握ってしまいます。
感情移入しすぎてしまう私は
息を切らしてしまうことも多々
どのシーンもキラキラと輝いていて
青春だなって感じます。
6.登場人物のトラウマ
主人公とヒロインは、二人とも
心に傷を負っています。
それが、解決・・・・
は、してないのかもしれません。
が、解きほぐされるシーンがあるのです。
主人公があるものを受け取るのですが
いまこの文章を書いてるだけでも
目頭が熱くなります。
ヒロインもいままで悩んでいた悩みが
解きほぐされます。
本当に、胸に来るものがあります。
人は、壁を乗り越えたときに成長します。
それを強く感じました。
7.完全無欠の完結
この作品は、これが1巻なのですが
これ以上にないくらい
完全無欠にきれいな終わり方をしているのです。
作家さんの心情状、続刊を書いて
人気が出るのが一番なのでしょうが
私個人、あくまで私個人の意見としてですが
続きの話は、書いてほしくないなと思いました。
それほどなのです!
それほどまでに非の打ちどころのない物語なのです。
一応、妄想として続きが出るとしたらどんな展開かな?
と、考えはしましたが
がっかりするような内容しか思い浮かびませんでした。
私は素人なので、もしかしたら
八目先生は素敵な作品を作り上げてくれるかもしれません。
先生の行く末を見守りましょう。
終わりに
ガガガ文庫期待の作品の名に劣らない素敵な作品でした。
作品というのは、受け手によってさまざまな感想が
出てくるのは当たり前ですが
この作品は、多くの人の目にさらされてほしい
そして、名作になると思います。
まだ読まれてない方へ
何か目標があって、悩んでる方へ
自暴自棄になり将来をあきらめている方へ
ぜひ、早めに読んでください。
あなたの今後の時間の使い方を
左右するほどの力があります。
無駄にしないでください。
八目 迷という作家の誕生に刮目してください。
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